各国戦車の開発と生産
アメリカ、ソ連、ドイツ、イギリスでは、それぞれ戦車の開発・生産に対する考えが異なっていた。どんな戦車をどれだけ生産したかを見てみるとわかる。
主力戦車の生産数比較
アメリカ、ソ連、ドイツの主力戦車の生産数を比較。
戦車名 | 生産数(約) | |
---|---|---|
アメリカ | リー | 12,000 |
シャーマン | 53,000 | |
ソ連 | T-34 | 50,000 |
KV-1 | 10,000 | |
IS-2 | 5,000 | |
ドイツ | III号戦車 | 6,500 |
IV号戦車 | 9,200 | |
パンター | 6,000 | |
タイガー | 1,500 |
ドイツの生産数が明らかに劣っていて、アメリカとソ連は戦車の種類が少ない。
大量生産のアメリカ、ソ連
アメリカは、とにかくシャーマン戦車を大量生産している。さらに、リーとシャーマンの車体やエンジンの仕組みは共通する部分が多く、航空機用のエンジンとも共通していたという。そのせいで車体は高くなり、性能もドイツ軍の戦車と比べると優れているわけではないが、とにかく戦車を大量生産することに主眼を置いているのがわかる。
ソ連も生産する戦車をT-34に定め、大量生産した。少しずつ改良を加え、攻撃力不足となった戦争後半も、主砲を85mm砲にして生産を続けた。T-34の優れた設計はドイツ軍に影響を与え、パンターが開発されることになる。
開発に苦しむドイツとイギリス
一方のドイツは、III号戦車とIV号戦車の設計が古くなると、いくつもの新型戦車を同時並行して開発しようとした。IV号戦車の後期型、パンター、そしてキングタイガー。それぞれ戦車の性能は高かったが、パンターは初期型で故障を頻発させ、キングタイガーは明らかに生産性に劣っていた。
また、ドイツ軍は複雑な構造の戦車を設計した。そのため生産に手間がかかり、故障したときも修理に苦労した。そして、ドイツ軍はディーゼルエンジンの開発に失敗し、パンターもタイガーもガソリンのエンジンだった。おかげで戦車の航続距離はかなり短かった。戦車大国というイメージのあるドイツだが、その開発と生産は必ずしも優れたものではなかった。
一方、戦車を初めて開発したイギリスも、ドイツ以上に戦車の開発は難航していた。戦車を巡航戦車という機動力重視のものと、歩兵戦車という防御力重視のものに分けて開発していた。前者がA27クロムウェル、後者がチャーチルというわけだが、どちらも中途半端な性能であり、活躍は今ひとつだった。
結局、アメリカのシャーマンを主力戦車として使用し、巡航戦車と歩兵戦車の長所を兼ね備えた「重巡航戦車」としてセンチュリオンが登場したのは、終戦間際のことだった。